さまざまな展開で多種多様なプロジェクトが公開される仮想通貨業界の中でも通貨価格を法定通貨とペッグさせた通貨銘柄に対する注目が高まっています。
本記事では、Day lott’sの出金時に使用されている最も知名度と評価が高いUSDT(Tether/テザー)についてと、その根本の仕組みであるブロックチェーンについて他のステーブルコインと比較して解説をしていきます。
目次
USDT(Tether/テザー)とは?
ボラティリティの大きな金融商品としての側面ばかりが注目される傾向にある仮想通貨の中で、市場価格を米ドルと連動させ安定させることで実体経済とのリンクを図るステーブルコインとして開発され2015年に公開されたのがUSDT(Tether/テザー)です。
仮想通貨は発行国が資産価値を担保する法定通貨と異なり、「国や金融機関の影響も受けない完全に独立した通貨」として開発されましたが、投機性の高さが災いして実体経済とのリンクが難しかったと言えます。
法定通貨との等価交換を担保することで資産価値の安定を図るのがペッグ通貨やステーブルコインと呼ばれるもので、Tetherは1USDT=1USDを担保する米ドルのステーブルコインです。
※ペッグ通貨:国の政策で、他国の通貨(場合によっては金価格)に対する自国通貨の為替レートを固定化すること
発行元 | Tether Limited |
通貨単位 | USDT |
発行上限 | 上限設定なし |
発行数 | 79,713,622,671 USDT
(2022年5月17日現在) |
(参考:CoinMarketCap2022/5/17調べ)
Tetherが一般的な仮想通貨と異なるのは中央集権体制で運営が行われている点で、購入者がTether社に米ドルを入金すれば同量のUSDTの発行、USDTを入金すれば同量の米ドルへの現金化を行う承認アルゴリズムProof of Reserveを採用しています。
現金化と同時にUSDTはバーン(焼却)され、USDTの市場流通量とTether社の裏付け資産高の均衡を保つことで、ステーブルコインとしての資産価値の担保が行われTether 社は米ドル保有高を毎日公表し支払い能力を示すことでTetherへの信頼を維持しています。
2022年5月17日現在のTetherの時価総額は75,661,868,165.83ドル(9,787,127,873,032円)
となっており、仮想通貨時価総額ランキングサイトCoinMarketCap内では第3位にランキングされています。
Day lott’sで使用されているUSDT(Tether/テザー)にはERC20とOmniの2種類がある
現在市場には、様々なブロックチェーンに対応したTetherですがここではDay lott’sに対応したビットコインのブロックチェーン上に存在するOmni layerのTetherと、イーサリアムのブロックチェーン上に存在するERC20のTetherを例にお話をしていきます。
同一銘柄でありながら2つのタイプの通貨が存在するのは取引を行うのに当たって非常に面倒ではあるものの、実際にマーケットでは2つのTetherの取引が行われています。
Tetherの発行はTether社が行っていますが、実質的運営は仮想通貨取引所Bitfinexの運営を行うiFinex社が行っており、Bitfinex・Poloniex・Bittrex・Binanceなどの海外大手仮想通貨取引所の基軸通貨として広く普及していることが発行プロトコル変更の要因だといえます。
Tetherが公開当初に利用したOmni layerはトランザクション速度が遅いことが流動性向上の妨げとなっていたため、仮想通貨取引の基軸通貨としては能力不足でした。
そこで2018年1月からトランザクション速度と手数料の圧縮が行えるイーサリアムのブロックチェーンを利用したERC20を発行プロコトルに追加し、新規発行を行うと共にTetherを取り扱う取引所でOmni layerからERC20へのプロトコルの置き換えが行われています。
プロトコルが異なればウォレットアドレスも異なります。
使用していた取引所のアドレスにOmni layerのTetherを送金しても着金しませんし、最悪の場合消滅する可能性があるので注意が必要です。
ERC20とOmniの2種類の見分け方
取引を行うTetherや送受金に利用するウォレットがOmni layerとERC20のどちらのプロトコルによって形成されているのかは、ウォレットアドレスを見れば確認することができます。
プロトコル別のウォレットアドレスは次のポイントを確認することで見分けられます。
- Omni layerベースのアドレス:1又は3で始まる
- ERC20ベースのアドレス:Oxから始まる
USDT(Tether/テザー)のメリット
プロトコルをERC20ベースに置き換えることでトランザクション速度の改善に成功したTetherには、トランザクション速度以外にも次に挙げるメリットが存在します。
- ステーブルコインのため仮想通貨のなかでは価格が安定している
- ペッグ通貨のため法定通貨への置き換え時のコストを抑えられる
- 多くの仮想通貨取引所の基軸通貨として取り扱われている
法定通貨との等価交換を担保するステーブルコインなので、Tetherの市場価格はボラティリティの大きな他の仮想通貨銘柄と比べると、抜群の安定感を見せる通貨銘柄だと言えます。
また、法定通貨へ置き換えをする際に他の仮想通貨銘柄の場合は手数料が生じます。
米ドルとの等価交換を担保するTetherであれば、仮想通貨から法定通貨への置き換えコストを大きく抑えることができます。
非常に多くの仮想通貨取引所で基軸通貨として採用されることでTetherはビットコインに代わる仮想通貨の基軸通貨として活用されるのではないかと考えることもできるでしょう。
USDT(Tether/テザー)のデメリット
ステーブルコインとして高く評価されているTetherですが、中央集権体制で運営されるためTether社の資産状況が通貨の信用に直結し、カウンターパーティーリスクが高いことがデメリットだと言われています。
カウンターパーティーリスク
仮想通貨を含む金融取引のなかでカウンターパーティー(取引相手)に起因する、債務不履行リスクをカウンターパーティーリスクと呼びます。
Tetherがステーブルコインとして機能するためには1USDT=1USDでの等価交換の担保が絶対条件で、米ドルとの等価交換の信用はTether社が流通するTetherと同量の裏付け資金を保有していることが大前提となります。
裏付け資金不足が発生すると米ドルとの等価交換が不可能となり、Tetherのステーブルコインとしての信用が失われUSDTの下落が生じる可能性があることがTetherにおけるカウンターパーティーリスクだと言えます。
事実、Tether疑惑とも呼ばれる裏付け資金の不正流用疑惑が存在します。
テザー疑惑ってなに?
発行したTetherと同量の裏付け資金を保有し米ドルと等価交換を担保することで、Tetherのステーブルコインとしての信用が確立されていますが、裏付け資金の26%がTether社の関連会社であるCrypto Capitalへ資金流用されたことが2018年に発覚しました。
裏付け資金の不正流量は仮想通貨取引所Bitfinexを運営するiFinex社が行ったものですが、iFinex社とTether社がグループ企業であることやBitfinexが2019年にトークンを発行したことで不正流用の補填を行ったのではないかと言われています。
不正流用疑惑で司法当局によって口座凍結された26%は8憶5,000万ドルに相当することに対し、Bitfinexの発行トークンの総額が10億ドルであったことや、調達資金の運用手段に「債務返済を含む事業資金としての使用」がホワイトペーパーに明記されていることからTether疑惑と呼ばれています。
USDT(Tether/テザー)以外のステーブルコイン
ステーブルコインは法定通貨担保型・仮想通貨担保型・無担保型の3つに大別され、法定通貨担保型のペッグ先として米ドル・日本円・ユーロ・人民元などが挙げられますが、Tether同様米ドルのステーブルコインとしてTrueUSD・Gemini dollar・Paxos Standardが存在します。
TrueUSD(TUSD)
TrueUSDはERC20を利用した仮想通貨でセキュリティートークンの発行を行うTrustToken社が発行しています。
通貨単位はTUSDで仮想通貨時価総額ランキングサイトCoinMarketCap内では第51位にランキングされています。(2022/5/17時点)
Gemini dollar(GUSD)
Gemini dollarはERC20を利用した仮想通貨で、アイデア盗用訴訟によりfacebookから6,500万ドルの和解金を勝ち取ったウィンクルボス兄弟が運営する仮想通貨取引所Gemini社が発行しています。
通貨単位はGUSDで仮想通貨時価総額ランキングサイトCoinMarketCap内では第153位にランキングされています。(2022/5/17時点)
Paxos Standard(PAX)
Paxos StandardはERC20を利用した仮想通貨で、ブロックチェーンを利用した金融サービスや仮想通貨取引所を運営するPAXOS社が発行しています。
通貨単位はPAXで仮想通貨時価総額ランキングサイトCoinMarketCap内では第59位にランキングされています。(2022/5/17時点)
USD Coin(USDC)
USD Coin(USDC)はERC20を利用した仮想通貨で、Coinbase社とCircle社がCENTERコンソーシアムのパートナーおよび共同設立メンバーとして運営し発行しています。
通貨単位はUSDCで仮想通貨時価総額ランキングサイトCoinMarketCap内では第4位にランキングされています。(2022/5/17時点)
まとめ
いかがでしたか?
今回はDay lott’sの出金手段である、テザーコインについて解説しました。
テザーコインはほかの仮想通貨とは存在意義が異なるペッグ通貨で、どのような仮想通貨市場でも価値に安定感があるのが最大の特徴です。
ペッグ通貨のメリットである価格変動の少なさを維持するためには、Tether Limited社が常に安定した運営をすることが必要不可欠です。
これが崩れると、一気に暴落する可能性があります。
テザー(USDT)で取引するにあたって、こうしたデメリットもしっかりと理解しておきましょう。